2018年04月08日

playlist - 4.08.2018

M1 : Dizzy Fingers / Zez Confrey
M2 : Etude pour pianola / Igor Stravinsky
M3 : Rialto Ripples / George Gershwin
M4 : That Old Piano Roll Band / Zez Confrey
M5 : Dizzy Fingers / Eddy Duchin



レギュラーゲスト<岡田崇さん>を迎えての音楽夜話。
先月お話に出ていた「Dizzy Fingers」の作曲家<Zez Confrey>の音楽と
その周辺の音楽家を特集。
アメリカの音楽史には、一般にはまだまだ語られない才能が、、、。



2月11日にソノシートでご紹介した宮間利之とニューバード+シャンブル・サンフォニエットの「Dizzy Fingers」。ブックレットに掲載されていたレコーディング時のマイクと楽器の配置図や楽曲解説が話題になりました。その解説の中でこの作曲者が、1924年2月にガーシュインの「ラプソディー・イン・ブルー」が初演されたことで有名なポール・ホワイトマン主催のコンサートで、超絶技巧の卓越したピアノソロで自作の「Kitten on the Keys」などを披露したゼズ・コンフレーという人物であると書かれていて興味を持った細野さん。今度この作曲家について特集をしよう!ということになったわけであります。ちょうどリル・デイジーから発売する『The SCOTT touch(レイスコ的)』というレイモンド・スコット風の楽曲ばかりを集めたコンピのライナーを書いているところでもあり、レイスコのようなノベルティー・ジャズの系譜などを調べていたところだったので、そんなことにも触れたり触れなかったりしつつ、軽い気持ちでゼズ・コンフレー特集に見せかけた、ノベルティー・ミュージックの成り立ちの一側面を今夜はご紹介いたします。
世界大戦、マイクロフォンの発明によるSP盤の音質向上、ラジオの普及、大恐慌、数え切れない要素が絡まり合っていますので、もちろん、全く違う見解もあるかと思いますが、こういうこともあったのかもねぇと聴いていただければと思います。

まずは、ゼズ本人のピアノロールによる「Dizzy Fingers」を。
Dizzy Fingers / Zez Confrey


元々、この曲は自動演奏ピアノ用のピアノロールのために書かれた曲だったようです。
ゼズは1895年4月3日生まれ、音楽大学ではフランス印象派のドビュッシーやラヴェルに浸漬され、兄のジムとオーケストラを結成、地元のホテルやボールルームで活動します。第一次世界大戦の時は海軍に加わり慰問ツアーなどを行い、終戦後はQRS Music Rollsという自動演奏ピアノの会社に就職、1918-24年の間に127本のロールを制作したそうです。
次にご紹介するのは、そのQRSという会社でのピアノロール制作のメイキング映像です。
リアルタイム演奏でロールにマーキングしていく様子やエディットしていく様子がご覧いただけます。
Piano roll production at QRS Music


まさに機械仕掛けのシーケンサーですね。
1921年にゼズは「Dizzy Fingers」や「Kitten on the Keys」を作曲しています。これらはジャンル的にはノベルティ・ラグ(ピアノ)と呼ばれています。従来のラグタイムと音楽様式は似ているのですが、大きな違いがあります。それは自動演奏ピアノのために書かれたという点です。ラグタイムの時代というのは音楽の伝搬手段が主に楽譜でした。そのため楽譜を買ったアマチュアが家庭でも弾ける比較的簡単な曲がラグタイムには多いです。ノベルティー・ラグになると自動演奏ピアノの販売促進のために制作されたという側面があり、聴衆を驚かせるような超絶技巧を駆使した複雑な曲だったり、もはや1人では演奏不可能な楽曲があり、新奇で奇抜なという意味合いを込めてノベルティー・ラグ(ピアノ)と呼ばれるようになり、その表現力の多彩さから複雑な曲想の描写音楽が多く作られました。ゼズより以前から自動演奏ピアノのための作曲をした作曲家のひとりにストラヴィンスキーがいます。1917年にエオリアン社のピアノラという機械のために書かれた「ピアノラのためのエチュード」をご覧ください。
Étude pour pianola / Igor Stravinsky


自動演奏ピアノ「ピアノラ」を操縦する“ピアノリスト”Rex Lawsonによる演奏風景。
Rex Lawson plays Stravinsky on the Pianola


ゼズよりも少し前、ストラヴィンスキーと同時期にピアノロールの会社で働いていたジョージ・ガーシュインによるピアノロールをどうぞ。
"Swanee" by George Gershwin Ampico Piano Roll P/B Clair & Pollock


ゼズとガーシュインは、1924年2月12日にエオリアン・ホールで開催されたポール・ホワイトマンのコンサート“An Experiment in Modern Music”でフィーチャリング・アーティストとして脚光を浴びます。ガーシュインはこの日のためにシンフォニック・ジャズ「ラプソディー・イン・ブルー」を作曲。ゼズは自作の「Kitten on the Keys」等をピアノソロで披露しました。
Kitten On The Keys Playrite Piano Roll


「ラプソディー・イン・ブルー」初演の時のエピソードはガーシュインの伝記映画「アメリカ交響曲」で紹介されていますので、ぜひご覧ください。この映画はガーシュイン少年が自動演奏ピアノに夢中になっているシーンから始まります。レイモンド・スコットも同じ頃、父親の経営するミュージック・ショップの自動演奏ピアノに夢中で、その正確な演奏、超絶的なテクニックによってピアノを習得したといいます。その時に聴いていたピアノロールは、ゼズやストラヴィンスキーやガーシュインのものだったかもしれませんね。

このポール・ホワイトマンのコンサート“Experiments in Modern Music”シリーズですが、1938年12月25日に第8回が開催されレイモンド・スコット・クインテットが出演して最終回となります。他にもこの日はデイジーホリデーで時々ご紹介する、Bert Shefter、Morton Gould、Walter Grossなども出演しました。14年間に渡ってポール・ホワイトマンが実験してきたノベルティー・ピアノ、描写音楽、シンフォニック・ジャズを模索する試みも、レイモンド・スコットの登場によって結実したということなのだろうか。
ではまた来週〜(岡田崇)


最後は、エディ・デューチンの伝記映画『愛情物語』から「Dizzy Fingers」をどうぞ!
Dizzy Fingers / Eddie Duchin


posted by daisy holiday at 22:16| daisy holiday 2018